前回の記事で、燻製の香りが主に煙に含まれる化合物に依存し、煙に含まれる化合物の組成や食材への付着量を燻製条件によってある程度設計できるのでは、というところまで示した。
ではその燻製条件における変数とは何が考えられるだろうか。
色々文献を読み漁って見えてきたものを整理してみる。
燻製の香りを左右するもの
・熱源温度
文献などで科学的に特にエビデンスが厚いのは、熱源温度によって煙の組成が変化することだ。
木材を加熱すると、温度条件によって生成する揮発性化合物が変化する。
つまり、同じ木材を使っていても、どのような温度で熱分解されるかによって、発生する煙そのものが変わってくる。
かなり重要そうな変数だが、普段燻製するときに意識することは実は少ないのではないだろうか。(実際私は今まで意識したことがない)
・燻製室温度
また他に考えられるものとして、燻製室の温度が挙げられる。
これは、いわゆる冷燻、温燻、熱燻といった違いになる。
それぞれの揮発性化合物は蒸気圧が異なる為、燻製室の温度によって食材に付着させる化合物を選択できる可能性がある。
…というのは色々調べて見えてきた旅路独自の仮説。
ただし燻製室の温度は、食材そのものを変質させる(火が入る)ため単純に比較はできない。
ここは工房完成後、旅路の実験で埋めていきたい領域だ。
・燻製時間
これは主に化合物の食材に対する付着量に影響する(と考えられる)が、化合物の濃度上昇→単純な燻製風味の増加とはならないことが研究によって示されている(Wang & Chambers 2018 )ことからこれも変数として考慮する価値があると考えている。
・木材種
これは経験的にも知られている変数かもしれない。
サクラは日本でも特に馴染みのある木材種だろう。サクラで燻煙された燻製を好む層がいるように、多くの人はこれら木材種の違いによる香りの変化を感じ取っているようだが、科学的にも官能特性に差が出ることは複数の研究によって示されている。(Gipson 2019など)
・その他変数
科学的な裏付けは少ないが、経験則的に知られている変数が数多く存在する。
例えば、
・チップの含有水分量
・燻煙の滞留状態(排気量や庫内の風速)
・庫内の高さ、位置
・食材側の水分量
等が考えられ、その組み合わせは膨大だ。
一気に全部は分からないので、次回から1個ずつ
次回はこれら変数を1つずつ深掘りしていこうと思う。
長いシリーズになりそうだが、文字にすることで私の理解も深まる側面が大きいので頑張っていきたいところだ。
分かったことだけでなく、調べてみて新しく出てきた疑問も含めて、引き続き記録していきたい。
次回、熱源温度編に続く。

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